エンジニアが始めた障がい者PCボランティアで得られた気づき

みなさんは「ボランティア」と聞いて、どんなイメージを持たれるでしょうか? 忙しい社会人生活のなかで、特にIT業界で働く私たちエンジニアにとって、「ボランティアに参加する余裕なんてない」と思ってしまうのも無理はありません。かく言う私も、そう思っていた一人でした。
ですがある日、「せっかく身につけたスキルを、もっと社会の役に立てられないだろうか?」とふと考えたことをきっかけに、私は地元のボランティア活動に参加するようになりました。
本記事では、そんな私が「障がいのある方にパソコンを教える」という活動を通じて感じたことや学んだことをご紹介します。エンジニアとしての日々とはまた違った、豊かな経験がそこにはありました。 少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
ボランティアを始めたきっかけ
私は昨年から地元の区で、障がいのある方にパソコンの使い方を教えるボランティア活動を始めました。実はこの年になるまで、恥ずかしながらボランティアの経験は一度もありませんでした。しかし「自分のスキルを社会に役立てたい」という思いから、一念発起して参加を決めました。
思い返せば大学時代(ちょうど2000年前後)、教授の手伝いで地域のお年寄りにワードやエクセル、メールの使い方を教えたことがあります。当時、メールの送り方をお教えした際、受講者のおばあさんが「これで離れて暮らすお孫さんにメールを送れる!」ととても喜んでくださったエピソードは今でも心に残っています。
障がい者にパソコンを教えて学んだこと
ボランティアで再びパソコン指導に携わることになりましたが、最初は正直「どう教えれば良いのだろう?」と戸惑いました。ところが一緒に活動する先輩ボランティアの方々から、「まず相手が本当にやりたいことを聞くことが大切」と教わったのです。
たとえば受講者が「ワードを習いたい」と言っていても、よく話を聞くと実際にやりたいのは表作成で、ワードよりエクセルが適しているケースもあります。相手のニーズを汲み取り、一人ひとりに合ったサポートを心がけることで、次第に教え方のコツがつかめてきました。
指導を通じて、私自身が教わることも多々あります。障がいがあるからといって特別変わった人がいるわけではなく、皆さん素直でまじめな方ばかりです。生まれつき障がいをお持ちの方もいれば、突然の病気や事故がきっかけで後天的に障がいを負われた方もいらっしゃいます。
教室ではパソコン習得という共通の目標に向かってお互い真剣ですし、そのひたむきな姿勢には毎回こちらが刺激を受けます。「自分もいつ病気や事故で障がい者になるか分からない」と思うと、人ごとではなく真剣に向き合えますし、何より誰かの役に立てるこの活動はとても意義深いと感じています。
ボランティア仲間の年齢層と気づき
ところで、ボランティア団体に入会した当初、メンバーの年齢層に驚きました。私より年上の方がほとんどで、40歳以下のメンバーは思いのほか少なかったのです。
おそらく仕事が忙しく時間が取れない方が多いのでしょう。実際、私自身も20代・30代は仕事中心の生活で、休みの日は疲れて家で休養するばかりでした。ようやく最近になって仕事が落ち着き、ボランティアに参加する余裕ができた形です。
統計的にも、若い世代のボランティア参加率は高齢世代より低いそうです。ある調査によれば、日本では60代のボランティア参加率が約22.6%と最も高い一方、20代は11.2%と最も低くなっています。
もちろん人生のステージによって自由に使える時間は異なりますが、「忙しいから」と敬遠しているともったいないと感じます。むしろ仕事以外の世界で得られる学びや喜びは大きく、特にエンジニアの皆さんが持つITスキルはボランティアの現場で大いに生かせるはずです。
AI技術と広がる支援の可能性
AI技術を活用した視覚障がい者向け歩行支援の例もあります。スマートフォンのカメラ映像から点字ブロックや障害物を検出し、リアルタイムで強調表示することで安全な歩行をサポートしています。
私も仕事でAI技術を学んでいることもあり、最近ではボランティア先でChatGPTのような生成AIの使い方を紹介する機会も増えてきました。これまでは主にワードやエクセルの操作説明が中心でしたが、参加者の中には「AIがそんなに進化しているなんて知らなかった!」と目を丸くされる方もいます。
おわりに:ボランティアに興味を持ったら
パソコン講師のボランティアを始めてから、自分自身の視野が大きく広がったと感じます。教える立場でありながら、多くのことを利用者の方々から教えていただきました。
技術的なスキルはもちろん大切ですが、それ以上に「人と向き合う力」や「相手の立場に立って考える大切さ」を学べたことは、エンジニアである自分にとって貴重な財産です。
もしこの記事を読んでいるエンジニアの方で、ボランティアに関心が芽生えたなら、ぜひ一度勇気を出して参加してみてください。
最初は戸惑うかもしれませんが、自分の持つ知識や経験が誰かの役に立つ喜びは、きっと何物にも代えがたいやりがいになります。仕事とは違うフィールドで得られる学びや交流は、新鮮で刺激的です。
私も40代で初めてボランティアデビューしましたが、「やってみて本当によかった!」と心から思っています。忙しい毎日の中で時間を捻出するのは簡単ではありませんが、週末の数時間からでも社会に貢献できる場があります。
皆さんも機会があればぜひ、ボランティアの扉を叩いてみてください。それがきっと、自分自身の成長にもつながるはずです。
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